猜疑

最近眠りが浅くなった
寝ても細切れに起きてしまうから
夢を見てもそれが夢なのか
記憶の断片なのかも曖昧になっている
今夜もまた起きた
深い闇に煙を吹かして
瞬く星をからかってやった
「良い子は深く眠るものよ」
と母が口煩く言ってたけど
私はもう悪い子になってしまった
やけに今夜は何処かへ逃げたくなって
いつもの場所へ行ったんだ
夜と同じくらい深い林の中にある
伽藍堂な路面電車
かつて万国のお偉いさんを運んだとか噂があるけど
どんな罰を犯してここに辿り着いたのだろう
甘ったるいメロドラマの主人公になりきって
助走をつけて飛び乗る
発車のベルも気怠げな車掌のアナウンスも聞こえないし
扉も閉まらない
銀河にだって行きやしない
このまま俺を何処かへ放り出しておくれよ
俺は世界を嫌っているのに
世界は俺を嫌ってくれない
また今日を裏切って
明日へ依存する