腕に文字が刻まれている
罅割れた水流のように
奔放に散らばり
腕が動く度その意味は変化する
不安定な文字の味を彼は知らぬ
紅の帳が落ちた頃
森の奥から甘ったるい煙が
輪廻を忌避する魂の如く
叡智を這う記憶配列の如く
支配された密林を疾走する
彼等の故郷は乙女の口腔
禍々しい赫に惑わされ
不純物を反芻することで
快楽を覚える
殺めた女王の愛は
耳朶を蹂躙し
手懐けた蜘蛛は
中指で微睡む
刻々と
犇犇と
歪な時計が
安寧を突き刺す
来年はどんな不幸が蔓延ると思う?
絶望かもよ
硝子の矛先から滴る
蒼い命を半紙に擦りつけ
蓋を閉じ
錠を下ろす
「ねぇダーリン……」
刻まれた奔放な愛を証明すべく
罅だらけの腕を掲げる
汝の名はーー
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