朝晩の鋭さが日に日に増している。冬がもうすぐ私たちの元にたどり着く。受け入れる決心が出来たら世界が平等に温かくなれる日、クリスマスが訪れる。
幼い頃から暖かく幸せな日と信じていたが、いつからかその日だけ特別視するのが面倒になってきた。
テレビやラジオに限らず、地元の小さな店でも永遠と流れるクリスマス・ソングに、クリスマスを強制させられるような気がして苛立ちが募っていた。
家族と、恋人と、大切な人と、幸せな日にしよう!
なんだよ、じゃあ普段は幸せじゃないのかよ。
なーんて、埃が積もりかけた約束を急に思い出されて一気に消化されてるような不安定さに絶望していた。(だったら最後まで低飛行でい続けたらいいのに)
そんなことを口にしたら当然おかしいのは私の方なので、秘密の話にして
似た疑問を持つ人は10人くらいはいるだろうと決めて蓋を閉めた。
そんな隠し事をしてから何度かクリスマスを超えたある年、文学館でメイ君と出会った。というか、既にインターネット越しで繋がっていたが、直接出会いたくて頑張って部屋から出た。
彼は私の大好きな作家の大好きな作品の登場人物と同じ名前を名乗り、抗いきれないジレンマを、詩とロックで爆発させてた。優しい言葉なのに少し寂しい、でも揺るぎない心がそこにある。
詩を通して実際に会い、何度かコメダ珈琲でお茶をするようになった。
お互い持病を持つ者同士、普通の人には見えない寂しさを共有することができた。
私も地元を出て生活できるようになっても、人生のベースや価値観がとっ散らかったまま放置して出てきたから生きづらい事!
だからこうして負の感情を出して笑いあえる人が出来たことが嬉しかった。それ以外にも、お互いの好きな映画や音楽、詩の話をして悲しい事以外の感情も共有するようになった。
あー、楽しいね。でもこの楽しい時間をコメダの中だけで済ますのはもったいない。
お互い負担にならない範囲で、数センチだけでも楽しい場所を拡張したいと思うようになり、最初に浮かんだのが「共同で何かやってみる」だった。
丁度、前橋にあるギャラリーアートスープで言葉に関する展示会の参加者を募集していたので私たちは「ナイーヴスーパー」とユニット名を付け、詩画作品を展示した。
第一歩としてはいい方だが、実際に見に来た人しか活動したってわからないし、もう少し長い時間人の記憶に残るものが出来たらいいね、となり次にやることが「詩集を作ろう」になった。
詩集企画が決まったのが夏。
お互い新しい詩を10編ずつ書いて発表すればそれっぽくなる。
テーマはどうする?クリスマスとかいいんじゃない?そうしよう。
テーマと表紙のデザインはメイ君、冊子の編集と入稿は私と役割を決めてクリスマスの詩をそれぞれ書いた。
1つのテーマで10編詩を書くなんて初めてだから、かなり苦戦した。
なぜなら普段の私の詩は夜更けの街灯でやっと浮かび上がる影くらい暗くて、幸せ?そんなの知りません(笑)って作風だから。
でも書いてるうちに幸せだけがクリスマスじゃないんだよ!と謎の反抗心が湧いてきて、薄暗くても道は照らしてくれそうなものが書けた。
完成した詩を見せ合う日、私の詩を読んだメイ君の感想は「変わらず暗いねぇ」だった。
彼の詩もクリスマスにぴったりなメルヘンと暖かさ、そして本音が少々
……知ってる?笠原メイってそばにいるんだよ。
ネットの中の彼しか知らない人も、実際会ったことある人も、新たな一面をこの詩集を通して出会えるよ。
いつも元気じゃないし、むしろ世の中に絶望してる2人がクリスマスをどう見てるか、何を生きがいにしてるのか、詩を通して何を感じているか、ネガティブな感情も隠さずストレートに出して、ある意味親しみやすい1冊になってます。
残り少ない今年のお供にナイーヴで美しい言葉とか、どうですか。
最後に、今回の詩集作成にあたって、ぼんやりしすぎた提案を受けてくれたメイ君、表紙のフラワーアレンジメントの画像の仕様を許可してくれた器物破損さん、素敵なCMを作ってくれたマリエさんに心から感謝いたします。
https://meikasahara.booth.pm/items/7680431
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